「ただ、君を想う」(FF4エッジ×リディア)
6
翌日、出発前にリディアは母の墓の前で祈るように目を瞑っていた。
(お母さん、行ってくるね。今度来る時はエッジと一緒だから)
母に別れを告げる。心配させないようにと、飛びきりの笑顔で。そして飛空艇へ向かうと村の者たちが出迎えてくれた。
「リディア、気をつけてな」
「みんな、今までありがとう」
「元気でね。また村に来てね」
「うん。またみんなとお母さんに会いに来るから」
リディアは飛空艇へ乗り込み、甲板から大きく手を振る。多くの者が別れを惜しみ涙する。リディアの瞳にも涙が浮かんでいた。
「発進するよ。しっかり掴まってて」
ルカは飛空艇を離陸させ、バロンへ舵を取る。ミストとバロンは目と鼻の先だ。次第に小さくなるミストの村。そしてバロン城が姿を見せる。
(もうすぐ会える・・・)
リディアはエッジの姿を思い浮かべる。会ってまず初めに何を話せばいいだろうか。どんな顔をするだろうか。想像するだけで高鳴る鼓動。それは新たな門出へのカウントダウンのようだった。
バロン城へ着くや否や、リディアはルカからエッジが滞在している部屋を聞き、胸を弾ませながら向かった。そして扉の前で大きく深呼吸し、恐る恐るノックする。だが、返事はなかった。
(あれ? いないのかな?)
手に汗を握りしめ、扉を開けると部屋はもぬけのからだった。
(どこ行ったんだろう?)
いつもフラっと姿を消すエッジ。この広い城や町中を探し回るのは骨が折れる。リディアは部屋で待つことにした。
一方、エッジは―――
「やっぱりルカか。元気にしてたか?」
「え、あれ? 一緒じゃないの?」
「何がだ?」
(もしかして入れ違い?)
ルカは首を傾げる。
「さっきまで町にいたんだ。飛空艇が見えたもんだからよ、もしかしたらと思ってきてみたんだ」
そしてエッジは積み荷を見る。
「今回はどこに行ってたんだ? 何かいいもんあったか?」
ルカはこんな時でも普段と変わらないエッジに呆れながらも、心のどこかで安心していた。
「これは全部あんた宛ての荷物だよ」
「なっ、ちょっと待て。これ全部か?」
「そうだよ。荷物はあんたと一緒にエブラーナに送り届けるからさ、そろそろ部屋に戻った方がいいんじゃない?」
「お、俺はまだ帰らな・・・! ルカ、ありがとな」
エッジはルカが言わんとしたことに気付き、全速力でその場を走り去っていった。