「ただ、君を想う」(FF4エッジ×リディア)
8
それから十日後―――
エブラーナの城は多くの来賓で溢れかえっていた。
「いくらなんでも早くない?」
「うーん、でもわたしも早い方がいいなと思って」
花嫁衣装に身を包んだリディアの髪をルカが結い上げる。すると女官長がやってきた。
「リディアさま、バロン王がお見えですよ」
「おめでとう、リディア」
「セシル! ローザも、セオドアも来てくれたんだ。みんなありがとう」
「こんなに綺麗だと、エッジにはもったいないわね」
「ロ、ローザ」
「もう冗談よ。でも本当によく似合ってるわ」
「うん、こういうの、初めて着たんだけど・・・」
「これはエブラーナの?」
「うん。エブラーナの花嫁衣装だって」
すると入口の方が慌ただしくなる。
「待たせたのう」
「シドおじちゃん!」
「ほれ、忘れもんじゃ」
「あ・・・ これ、お母さんの・・・」
「勝手に拝借してきたが、ま、わかってくれるだろう」
「ありがとう」
そしてルカはリディアから金の髪飾りを受け取り、リディアの髪に取り付けた。
「リディア」
名を呼ばれて振り返ると正装を粋に着こなしたエッジの姿があった。
「みんな揃ったみたいだな」
「じゃあ、わたしたち先に行ってるわね」
そしてセシルたち一行は部屋を後にする。ローザは部屋を出る際、エッジに何やら耳打ちしたようだ。エッジの顔が一瞬で青くなる。
「どうしたの?」
「いや、何でもない・・・」
「変なの。せっかくの晴れ舞台なんだから、しっかりしてよ」
「わかってるって。あれ? それ・・・」
エッジはリディアの頭に飾られた金の髪飾りに気づく。
「シドおじちゃんがお母さんのお墓から持ってきてくれたの」
「そっか。落ち着いたら二人で返しに行こうな」
「うん、ありがとう」
そしてリディアは軽くエッジに口づけた。二人は見つめ合い微笑んでいると、そこへ家老がやってきた。
「若さま、リディアさま、準備が整いましたぞ」
「わかった。じゃあ、派手にいくか」
エッジはリディアの前に手を差し出す。リディアは嬉しそうに手を重ね、二人は会場へ向かった。
大歓声の中、エブラーナのしきたりに則った儀式が執り行われ、二人は契りを交わし夫婦となった。会場へ招かれた各国の王たち、共に世界を救った仲間たちから祝福の言葉が送られた。そして二人が城のバルコニーへ行き城下に姿を見せると、より一層歓声は大きくなる。国中の誰もが惜しみない拍手を送った。幸せそうに寄り添う二人。それはエブラーナの未来を現しているかのようだった。
ひと月後―――
ミストの村では子供たちが召喚獣の名を言い合いながら元気に駆け回っている。人々は穏やかな日々を送っていた。
「あら?」
墓の手入れにやってきた村人が、一つの墓に金の髪飾りと花束が添えられているのに気づく。
「来てくれたのね、リディア」
空を見上げると遠くに飛空艇が見えたという。