「ただ、君を想う」(FF4エッジ×リディア)
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「久しぶりね、エッジ」
「ローザ! 相変わらず、おめえは美人だな」
「あら、お世辞はいいのよ。リディアのことしか頭にないくせに」
全てお見通しのローザには、いつも頭が上がらない。
「セシルは軍議中だから、少し待っててもらえるかしら」
「ああ、俺のことは気にしなくていいぜ。テキトーに時間潰すからよ」
そうしてエッジは城下町へ繰り出した。
一国の王がお供もつけず、とローザがエッジの身を案じたが、一人の方がラクなのだと言って一人町の中を歩いていた。世界一の大国とあって、町の中はどこもかしこも人・人・人。どこの店もたくさんの人で賑わっている。すると突然飛び出してきた子供とぶつかった。
「ご、ごめんなさい」
「いや、大丈夫か?」
「え? あ、あなたはエブラーナの・・・」
「おまえ、セオドアか。こんなところで何してんだ?」
「えっと、その、買いものに・・・」
セシルとローザの息子、バロンの第一王子が買いものなどと、エッジは自分のことを棚に上げて呆れていた。
「ローザは一体何考えてんだ」
「母上は、自分でできることは自分でするようにと、いつもおっしゃられていますので・・・」
ローザらしい。エッジはそう心の中で思ったが、口にはしなかった。
「エドワードさまは、どうして町へ?」
「その【エドワードさま】って言うの、やめてくれ。エッジでいい」
「でも・・・」
「あー、別に気にしなくていいからよ」
困った顔をしたセオドアをよくよく見ると、両手が塞がっている。
「なんだ、荷物だらけじゃないか。そっち貸せ。ほら、戻るぞ」
エッジは強引にセオドアの左手から荷物を奪い取り、城へ向かって歩き始めた。セオドアは慌てて後を追う。セオドアと荷物を送り届けると、先ほど案内された客間へ戻った。
「あら、早かったわね」
「おめえ、どういう教育してんだよ。人に危ないとか言っといて、息子は一人にしてもいいのか?」
「セオドアに会ったの?」
「ああ。町の中で一人で買いものしてたぜ」
「あの子はあれでいいのよ。甘やかしたらロクなことないんだから」
ローザはきっぱりと言いのけた。これにはさすがのエッジも苦笑するしかなかった。すると扉の向こう側でバタバタと物音がする。バタンと勢いよく扉は開かれ、軍議を終えたセシルが慌てた様子で中に入ってきた。
「エッジ、待たせてしまってすまない」
「おめえも相変わらずだな。ちゃんと統治できてんのか?」
「な、なんとかね・・・」
世界を救った英雄の一人といえども政治は苦手のようだ。だが、しっかり者のローザが傍についているので、エッジは心配という心配はしていなかった。
「ところでエッジ、話というのはなんだい?」
「ああ、話せば長くなるんだが・・・」
そして事の始まり、エブラーナで起きた世継ぎ問題から、自分自身で決着をつけるため、ミストへリディアに会いに行ったことを話した。