「見つめる瞳と10の言葉たち」(FE蒼炎ボーレ×ミスト)
誰よりも愛しい姿
ミストは久しぶりに兄アイクと二人で買い物をしていた。
復興作業の中での久々の休日。
アイクはせっかくの休みがと最初は行くのを拒んでいた。
だが、日を追うごとに成長する体に合う服がなくなってきたため、
サイズを合わせるからと半ば強引にミストが連れてきたのだ。
アイクは何にも無頓着で、なんでもいいと人任せだ。
そんな兄に呆れながらもミストは兄や団員たちの服を選んでいた。
あ、この色、似合いそう・・・
思い浮かべたのは兄ではなく、想い人の方だった。
デインとの戦いが終わってから、ミストは今まであったことを振り返り、
初めて自分の想いに気が付いたのだ。
いつも傍で守ってくれた。
辛い時には話を聞いてくれた。
それが当たり前な筈はない。
今までその優しさに甘えていたのだと、自覚せざるを得なかった。
だからといって、今までと何かが変わったということはない。
今はまだ、このままでいいとミストは思っていた。
服を選ぶ手が止まったままのミストを見て、アイクは怪訝に思い声をかけた。
「ミスト、どうした?」
「あ、お兄ちゃん。 えっと、あのね・・・」
「なんだ?」
「あ、そうだ。 サイズ合わせたいから、ちょっと後ろ向いて」
アイクは言われたとおり後ろを向き、ミストの背に合わせて少しだけ屈んだ。
すると、ミストは持っていた服を広げて、アイクの背中に合わせる。
「お兄ちゃん、ありがとう。 もういいよ」
ちょうどサイズが良かったのか、同じサイズの物を手際よく何着か選ぶ。
嬉しそうに選んでいるミストを見て、アイクは違和感を覚えた。
だが、それが何なのかはわからなかった。
数日後―――
アイクはオスカーとの手合わせを終え一息吐く。
その近くでミストとボーレが手合わせをしていた。
手合わせの割に、なぜかミストが楽しそうに見えた。
そして、よく見るとボーレは見覚えのある服を着ていた。
そう、先日の買い物でミストが手を止めた服だった。
この時、アイクは違和感を覚えた理由が少しわかったような気がした。
「・・・二人とも仲が良いな」
「ん? ああ、ミストとボーレか」
「ミストがわたしたちの分まで服を直してくれたりして助かってるよ。
ここのところ忙しくて、弟たちの面倒があまり見れてないんだ」
「俺も人のこと言えた義理じゃないが、もう小さな子どもじゃないんだし、いいんじゃないか?」
「はは、そうだね」
すると、ミストとボーレがこちらにやってきた。
「アイク、手合わせしようぜ」
「わかった。 そのかわり手加減はせんぞ」
「当たり前だ」
そうして、アイクとボーレはすぐさま手合わせを始めた。
「お兄ちゃん、頑張って。 ボーレなんかやっつけちゃえ!」
「アイク、ボーレをこてんぱんにしてくれないか」
「なっ、兄貴まで!?」
「そういうことらしい。 ボーレ、覚悟しろよ」
「ちょっ、待・・・」
その後、ボーレはアイクによってコテンパンにのされた。
だが、ミストに手当てをしてもらい上機嫌だったという。
◆ あとがき ◆
好きな人の服を選んでいる時に、その服を着ている姿を思い浮かべるのは恋する乙女ならではかなと思います。
誰よりも愛しい姿=ウェディングドレスという発想もありました。
ただ、これまで話の舞台が蒼炎でしたので、また別のお題を借りて書きたいなと思っています。
最後はミストの気持ちに全然気づいていないボーレに、兄たちが引導を渡したみたいな感じです(苦笑)
きっと二人の将来が心配で仕方ないと思います。
(2009年7月15日)