「見つめる瞳と10の言葉たち」(FE蒼炎ボーレ×ミスト)
ひっそりと微笑む唇
戦続きでも欠かさない訓練。
ミストは毎日、兄であるアイクに剣の稽古をつけてもらっていたのだが、
この日は次の戦に向けて軍議が長引いていたため、一人で訓練をしていた。
「お、やってるやってる」
「何よ、ひやかしに来たの?」
「違う違う。 ちゃんと様になってんのか見にきたんだよ。 今日はアイクいないんだろ?」
「そうだけど・・・」
不服そうにミストは彼を見上げた。
彼の武器は斧、自分の武器は剣なのだ。
「ボーレは斧使いじゃない。 剣のこと、わかるの?」
「当たり前だろ。 初めて斧を手にした時、他の武器の特徴もグレイル団長に教えてもらったんだ。
それに斧は剣に不利だしな。 苦手な相手の武器を知っておいて損はないだろ」
ボーレの言うことはもっともだった。
だが、彼らしくないまともな発言に笑わずにはいられない。
「笑うなよ」
「ごめんごめん。 じゃあ、ボーレはわたしに不利なんだね」
「何言ってんだ。 まだ剣を扱い始めて、そう日が経ってないくせに」
「やってみなきゃわかんないじゃない」
「無理無理、俺には勝てねえよ」
ミストが握っていた訓練用の剣を、ボーレは軽々と取り上げてしまった。
「こんな簡単に武器取られちゃ戦いにもならないだろ」
「今のは油断してたからよ!」
躍起なるミストの頭を、ボーレはあやすようにポンポンと撫でた。
「別にミストは戦わなくていいんだ。 俺やアイクが守ってやるからさ」
そして、ボーレはミストに剣を返す。
アイクも始めはミストが剣を持つことに反対していた。
だが、ミストは守られてばかりいるのが辛かった。
「わたしだって、みんなの役に立ちたいの。 足手まといになりたくないの」
「足手まといになんかなってない。 ミストは十分役に立ってるじゃねえか。
怪我したらすぐ治してくれるだろ? 利き腕怪我したら、俺たちはまともに戦えない。
だから、ミストが近くにいてくれるだけで、安心して戦えるんだ」
「本当・・・?」
「ああ。 嘘なんて言わねえって」
「ありがとう」
ミストは満面の笑みを浮かべて礼を言う。
ボーレは照れくさそうに、ひっそりと微笑んでいた。
◆ あとがき ◆
ボーレって感情が顔にハッキリ出るタイプだと思うので、こうしてひっそり微笑むのはなかなか無さそうな気がします。
反対にミストは何か良いことがあると、ひっそり微笑んでいそう。
でも、周りはなんとなく変化に気付いていそうな気がします。
結局どっちもバレバレなんですよね(笑)
(2009年2月11日)