「見つめる瞳と10の言葉たち」(FE蒼炎ボーレ×ミスト)

嘘のない一瞬の表情

最近元気がないと思っていた。
何も言わないから、何も聞かずにいた。
だからといって、放っておけない。
ボーレは一人葛藤していた。
どう切り出せばいいか考えていると、意中の彼女が後ろから声をかけてきた。

「どうしたの? 何か悩んでるの?」
「いや、その・・・」

彼女は不思議そうに見上げてくる。
ボーレは大きく溜め息を吐き、観念したかのように口を開いた。

「最近元気ないだろ。 何があったか知らねえけど元気出せよ」

その言葉に彼女は驚き、唖然とする。
そして、ほんの一瞬だけ泣きそうな顔をして、すぐ笑って見せた。

「わたしは大丈夫だよ」

それが嘘だとわかっていても、ボーレは否定せず、ただ優しく頭を撫でた。
すると、その手を彼女は手に取り握りしめた。

「ボーレの手、大きいね」
「ん? ああ、ミストと比べたらそりゃでかいだろ」
「大きくて優しくて暖かくて・・・ すごく安心する」

ミストは父のようだと思ったが、さすがにそれは口にはしなかった。
いくらなんでも父と比べてしまったら、ボーレがあんまりだ。
だが、ボーレはミストの言葉にご満悦のようだった。

「こんなんで安心するなら、いつだって貸してやるよ。 だから、話したくなったら話せよ」
「うん、ありがとう」

ミストはその気持ちだけで十分だった。
満面の笑みを見せると、少しだけボーレの顔が赤くなったという。

◆ あとがき ◆
ボーレ視点から始まったのに、最後はミスト視点になってしまいました。
まだまだ初々しい二人の関係が、少しずつ進展していけばな、と。
相手を想っていることを二人とも隠していて、でも、周りは知ってるという。
二人の場合、初恋だと思うんですよね。
初恋は実らないっていうから、兄たちの方が心配していたりして。
(2009年1月22日)