「見つめる瞳と10の言葉たち」（FE蒼炎ボーレ×ミスト）
過去を映す瞳
「もう大丈夫だからな」
懐かしいと思った。
その優しい眼差しが、瞳の色が、一緒だったから。
「あとは俺に任せて、ミストはここで休んでろよ」
そして、再び戦いの中へ身を投じる彼。
足を負傷したミストはただ、その後ろ姿を見送ることしかできなかった。
助けてくれたのに、お礼言えなかった・・・
普段、調子がいい彼は、戦いになると見違えるように頼もしくなる。
兄であるアイクが団長になってからは、ミストも戦いに参加するようになり、
これまで何度も危険な目に遭ってきた。
だが、気が付けばいつも彼が助けてくれる。
どうして？
さっきだって、お兄ちゃんと一緒に前線にいたはずなのに・・・
ミストは彼に手当てしてもらった足を見る。
乱雑で少し不格好な包帯が彼らしくて、思わず笑みが溢れた。
そうして待っていると戦いが一段落したのか、彼はアイクと一緒にミストの元へ戻ってきた。
「ミスト、大丈夫か？」
「うん、大丈夫」
「キルロイに診てもらった方がいいんじゃないか？」
「これくらい平気。 わたしよりお兄ちゃんたちが診てもらって」
「わかった。 だが、無理はするなよ。 いいな？」
「うん・・・」
「アイク！」
すると、アイクたちの肩越しに聞き慣れた声がした。
「ボーレ、ミストのこと頼む」
そして、アイクは声の主であるティアマトの元へ走っていった。
ボーレは何も言わず、ミストの前に手を差し伸べる。
ミストはその手を取り立ち上がったが、負傷した足が痛みバランスを崩す。
「・・・っと、大丈夫か？」
ボーレは軽々と片腕でミストを受け止めた。
その腕は逞しく、とても安心する。
まるで・・・
「お父さんみたい・・・」
「ん？ なんか言ったか？」
「ううん、なんでもない」
顔を上げると、また優しい眼差しで微笑んでくれた。
とても暖かくて懐かしくて、なんだか涙が出そうになった。
「ボーレ、助けてくれてありがとう」
「ああ、気にすんなって」
そして、ボーレは照れくさそうに顔を背け、無言でミストに肩を貸すのだった。
◆ あとがき ◆
ちゃんと雰囲気伝わってますでしょうか・・・
お題に沿って書けてるのかも謎ですが（汗）
同じ斧使いであり、瞳の色も同じ碧色のボーレに、ミストは父親を重ねて見ています。
時系列でいうと、デイン王都へ向かっている途中でしょうか。
お互い異性としては意識してるけど、恋愛としてはまだ自覚してない状態です。
わたしの中で二人は初恋という初々しさが似合うなと思っています。
（2008年11月9日）