「ただ、君を想う」(FF4エッジ×リディア)

5

最後の召喚士としての責任感からか、リディアは自分の気持ちを心の奥深くに押し込めて、ずっとミストを復興させることだけを考えてきた。昼間長老に言われたことを思い出しながら夕食の準備をしていたが、何も手につかなかった。
(どうしたらいいの?)
気がつけば表へ駈け出していた。
普段、一人で考え事をする時にやってくる場所。そこは幼いころ、母が召喚士の話をしてくれた場所であり、そして母のことや村で起きたことを初めてエッジに打ち明けた場所でもある。
(あの時、エッジはわたしが泣き止むまで、ずっと優しく抱きしめていてくれた・・・)
ギュッと自身を抱きしめる。
(エッジ・・・エッジに会いたい・・・)
しばらくその場に蹲るようにしていると、突如風が吹き荒れ始めた。
「リディア!」
名を呼ばれ顔を上げる。そして空を見上げると、リディアのちょうど頭の上に飛空艇が浮かんでいた。
「ルカ! どうしてここに?」
「迎えに来たんだよ。ちょっとそこで待ってて」
そうしてルカは飛空艇を旋回させて近くの草原に着陸させた。ルカの姿を発見したリディアは、ルカに飛びつくようにして抱きついた。
「遅くなってごめん。もっと早く来たかったんだけどね」
リディアが何か言いたそうにすると、ルカはニッと笑った。
「言わなくてもわかってるよ。まったく、二人とも世話が焼けるね」
「ありがとう、ルカ」
「じゃあ、さっそく準備しようか」
二人はリディアの家へ行き、荷物をまとめ始めた。リディアの家から沸き上がる明るい声に、長老はうんうんと満足そうに頷いていたという。

翌日もリディアは村での仕事をこなしながら、家の荷物をまとめていた。少しずつルカが飛空艇へ運び始める。その様子を見た村人たちが、心配そうに様子を覗っている。
「リディア、村の人たちには話したの?」
「ううん、まだ話してない」
「そっか。早く話した方がいいんじゃない?」
ルカは窓の外を指で示す。村人たちがリディアの家の周りを気にするように行き来している。
「みんな・・・」
「行ってきなよ。あとはわたしがするからさ」
リディアは小さく頷くと、意を決したように表へ出ていく。その後ろ姿を見てルカは大きな溜め息を吐いた。
「ホントわたしって、世話焼きだよね。ま、二人が幸せになってくれたらそれでいいんだけど」
ルカは二人が互いのことを想い合っていることを知っていた。時には相談に乗ることもあった。これまでずっと傍で歯がゆい思いをしていたのだ。
(これで少しは肩の荷が下りるかな)
ルカは嬉しそうに荷運びを再開した。

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