FE覚醒 クロム×ルフレ♀

大いなる祝福

晴れ晴れとした青空の下。
イーリス王都は国中から集まった人々で溢れかえっていた。
王子クロムの生誕祭。
クロムたちに助けられた人々がお祝いの品を持ってやってきたのだ。
朝からその対応に追われ、休む間もなくフレデリクやティアモたちが動いている。
クロムはたった一人で執務に追われ、執務室に籠りっきりだった。
亡き聖王エメリナに代わり政治や外交を行っているが、未だに不慣れなため大量の書類に悪戦苦闘していた。
書類の一山を片付けると背伸びをして一息つき、そして最愛の妻を思い浮かべる。
今すぐ会いたい。
そんな衝動に駆られるが、今はクロムの子を身籠ったばかりで、無理をさせる訳にはいかない。

これぐらい俺一人でなんとかしなければ・・・

そう思っていた矢先だった。
コンコンと誰かが扉をノックした。

「クロムさん、いらっしゃいますか? 入りますよ?」

声の主がわかり大慌てで扉に向かう。
扉が開くと同時にクロムは扉を開けた者を抱きしめた。

「ルフレ! 会いたかった・・・」
「ク、クロムさん!? こんなところで、恥ずかしいです・・・」
「す、すまない」

回廊には護衛の兵士たちがいるため、ルフレは顔を真っ赤にして俯いた。
クロムは時折、人目も気にせず大胆なことをする。
もう少し気にして欲しい、そう思いながらもルフレはクロムの気持ちが素直に嬉しかった。

「それよりもルフレ、どうしたんだ? 何かあったのか?」
「今日はお一人で大変でしょうから、少し休憩にしませんか? 軽食を作ってきたんです」

ルフレが手に持っていたバスケットを見せるとクロムは頷き、部屋の中に招き入れた。
だが、部屋の中は殺伐としているため、とてもゆっくり休めそうにない。

「せっかくですから外で食べませんか? お天気も良いですし」
「そうだな、そうしよう」

体を動かす方が得意なクロムは一日部屋に籠っているのは苦痛でもあった。
普段ならフレデリクたちが手伝ってくれるため、執務の合間に訓練をして体を動かせるのだが、
今日に限っては自分のためなのだからわがままも言っていられない。
そんなクロムを気遣ってルフレは提案したのだった。
部屋からバルコニーへ出ると、二人を招くように心地良い風が吹く。

「ふぁ~、やっぱり外は気持ちいいな」

大きく伸びをするクロムにルフレは優しく微笑むと、ブランケットを広げて座り、バスケットの中からサンドイッチを取り出した。

「さぁどうぞ。ゆっくり食べてくださいね」

クロムは嬉しそうにそれを頬張った。
一口二口と食べ始めたはいいが、お腹が空いていたのかあっという間に平らげてしまう。

「もう、ゆっくりって言ったじゃないですか」
「あまりにも美味かったからつい・・・」

クロムは申し訳なさそうに頭を掻いた。
しょうがないですね、とルフレは苦笑しながらお茶を入れる。

「少し冷めてしまってるかもしれませんが・・・」
「そんなの気にしなくていい。ありがとう」

クロムは礼を言い終えるとカップを受け取りグビっと一気に飲んでしまった。
そしてすぐに立ち上がった。

「もう少し休まれては・・・」
「みんな頑張ってくれてるからな。俺だけ休んでる訳にもいかないだろ」
「で、でも・・・」

クロムの気持ちがわからない訳ではない。
だが、クロムにあれこれするなと止められて、一緒にいる時間が極端に減っていた。
もう少しだけ傍にいたい、そんな心境が顔に出てしまった。

「ああ、もうそんな顔するな」

クロムはそっとルフレの頬に手を添え、優しく口づけた。
そして互いの存在を確かめるように抱きしめ合った。

「・・・わがまま言ってごめんなさい」
「いや、ルフレは悪くない。そんな思いをさせた俺が悪いんだ」
「もう大丈夫です。お仕事に戻ってください」

二人が立ち上がると、城下から何やら歓声が聞こえてきた。
何事かと思って様子を見に行くと、城下にはたくさんの人が集まっていた。

「みんなクロムさんのお祝いにきてくださったんですよ」
「こんなにたくさん・・・」
「手を振ってあげてください。みんな喜びます」

ルフレに言われたとおりクロムが手を振ると、より一層歓声は強まり中には涙ぐんでいる人もいるようだった。
クロムは国中から集まってくれた人々に祝福されていることを実感し感謝した。
気持ち新たにして執務に励もうと執務室へ戻ろうとすると、クロムのマントをルフレが引っ張った。

「ま、待ってください・・・ あの、これ、サーリャさんに教えてもらって作ってみたんですが・・・」

ルフレは小さな袋を取り出し、おずおずとクロムに手渡した。
袋を開けると手作りの魔よけが入っていた。

「ありがとう。大事にする」

無くさないようにとファルシオンの鞘を下げているベルトに結びつけた。
ファルシオンはイーリスの家宝だから何があっても無くすわけにはいかない。
これなら大丈夫だろうとクロムが微笑むと、ルフレも嬉しそうに笑った。
そうして二人は執務室へ戻っていった。

その夜、城内では生誕祭が催され、たくさんの仲間に祝福された。
クロムはルフレに寄り添うようにして、終始幸せそうにしていたそうだ。

◆ あとがき ◆
戦いの最中に生誕祭なんて大々的なことはできないだろうなと思ったので、
イーリスでの平和な2年間にあったクロムの生誕祭を勝手に妄想して書きました。
クロムとルフレの幸せな様子が伝わればいいなと思っています。
(2012年5月27日)