「見つめる瞳と10の言葉たち」(FE蒼炎ボーレ×ミスト)

無色の優しさ

「無理すんなよ」

そういって優しくわたしの頭を撫でてくれる。
わたしが辛い時には必ずと言っていいほど。
時には、わたしが泣き止むまで、ずっと傍にいてくれる。
ねえ、どうして?

「ボーレ・・・」
「どうした?」
「ボーレは、どうしてそんなに優しくしてくれるの?」
「え? ・・・そうだな、ミストが元気ねえと、なんつーか放って置けないんだ。
ミストは元気な方が・・・いしな」
「え、なんて言ったの?」
「ミ、ミストは元気なのが似合ってるって。 だから、元気出せよ」

そういって逃げるようにボーレはその場を去っていった。
そんなボーレがおかしくて、思わず笑みがこぼれる。
兄や姉代わりのティアマトたちとは違う優しさ。
親兄弟とは違う温もりがある。
何色にも染まらないボーレの優しさは、ミストに安心感を与える。
それが普通と思えてしまうミストは、この時はまだ自分の気持ちに気付いていなかった。

一方、ボーレは思わず出た本音に冷や汗をかいていた。

「おい、ボーレ」
「おわぁっ」

突如声をかけられ、飛び上がるように驚く。

「なんだ? 変な声出して」
「アイクか・・・ 驚かせるなよ」
「ボーレが勝手に驚いただけだろ。 ・・・おまえ、ミストに何かしたか?」
「べ、別に、俺は何も・・・」

目を逸らしたボーレに、アイクは疑いの目を向ける。

「ミストのやつ、最近元気がなかったのは知ってるだろ? さっき話してみたら、
なんか良いことあったみたいでな。 ボーレのおかげだって言ってたんだ」
「へ? 俺の・・・?」
「なんだ、自覚がないのか? ま、いいか。 ありがとな」

そういってアイクは再び会議を行っている天幕へ戻っていった。
会議の休憩の間に、たった一人の妹を心配して様子を見に行ったのだろう。
アイクは誰よりもミストを大事に思っている。
だからこそ、少しでも力になりたいと思っていた。
だが、そんな思いに反して、胸はざわつく。
ボーレは訳がわからずにいた。

◆ あとがき ◆
いざ、書いてみたら、あまりにも短くて、ボーレのその後も書いてしまいました。
二人とも一緒にいることが多いけど、鈍感だからそれが自然に思えてしまう。
周りから見たら桃色でも、ミストの目には何色にも染まらない自然な優しさになってしまう。
でも、ボーレは初めて会った時からミストのこと好きだったんじゃないかと。
一目惚れというか、素直に可愛いなって思ってたらいいなと。
最後のは嫉妬、ですかね。 兄妹の関係に嫉妬してどうするんだ(苦笑)
(2009年3月14日)